「電験三種を取得しても意味がない」「稼げない」という意見を聞いたことがありませんか?

資格のなかには実用性の低いものもあるため、実際どうなのだろうかと不安になりますよね。

結論からいうと、第三種電気主任技術者は手に職がつき、シニアになっても”食べていける”資格です。

この記事では「電験三種は意味ない」と言われてしまう理由と、資格を取得する実際のメリット、年収アップのコツを紹介します。

 

「電験三種は意味ない」と言われる理由

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なぜ「電験三種を取得しても意味がない」と言われてしまうのでしょうか?

まずはその理由を詳しく解説します。

取得難易度は高いのに年収は高くない

電気主任技術者資格は、強電系で最高難易度の資格です。三種であっても難関資格の部類に入り、必要な勉強時間は1,000時間ともいわれます。

関連記事:電験三種の難易度は高い|年度別合格率と、合格するために大切なこと

そこまで難しいのなら、資格保有者の年収はさぞ高いのだろう……と思いきや、実はそうでもありません。

【A社】 オフィスビルの設備管理
資格・経験】 学歴不問、電験資格(3種以上、未経験可)
勤務時間】 シフト制(4交代)
年収例】 300〜450万円
B社】 受変電設備等の電気設計、管理・保守
【資格・経験】 電験3種以上、電気・回路設計の経験
勤務時間】 日勤
年収例】 450万円~850万円

求人サイトをみると、役職のない電気主任技術者の年収相場は300〜450万円がボリュームゾーンとなっています。日本人の平均年収430万円と比べて、高収入とは言い難いのが正直なところでしょう(参考:国税庁ホームページより)。

もちろん、役職がつくほど、また大企業であるほど年収が高い傾向にはあります。

しかし大企業の場合、新卒で入社した社員に資格を取得させることが多く、電験三種に合格しただけで大企業へ転職するのは難しいのが現実です。

給与の割に責任が重い

電気主任技術者が取り扱うのは高圧の受電設備。その仕事内容は危険と責任を伴います。

それなのに給与は平均並となると「割りに合わない」と感じる人はいるでしょう。

また会社によっては夜間対応が必要なケースもあり、そういった会社に入ると体力的にきついという声もあります。

「資格取得の労力と給与・待遇が見合っていない=資格の意味がない」という意見がでるのも頷けます。

未経験だとはじめは厳しい

求人情報サイトで検索すると、未経験者も歓迎している求人が多く見つかります。

とはいえ資格に合格して就職できたからといって、現場の業務ができるわけではありません。

配電盤をみてトラブル原因を分析したり、配線工事したりした経験がないと、就職しても肩身が狭いという話がちらほらあります。

また上記の求人例からもわかる通り、未経験者の給与は低めです。精神面でも給与面でも、経験を積むまでが辛いといえるでしょう。

しかしながら、実務経験が重要視されるのはどの資格職でも同じです。

電気の世界で長期的にキャリアを築いていこうと考えるなら、最初は割り切る覚悟が必要かもしれません。

 

「意味ない」は誤解!電験三種は”長期的に食べていける”資格

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「取得難易度の割に……」という意見には一理あるものの、それでも電験三種は取得するメリットが大きい資格です。

というのも、電験三種はシニアになっても”長期的に食べていける”可能性が高い、数少ない資格の1つ。そういえる理由を4つ紹介します。

仕事がなくなる心配がない

ビルや工場といった建物の多くは高圧の受電設備があります。

高電圧になるほど電気は危なくなるため、高圧の受電設備には電気主任技術者の保安・管理が必要と法律で定められています。ちょっと電気に詳しいからといって一般人が代替はできません。

今後の日本を考えたとき、ビルや工場がなくなる可能性は非常に低いでしょう。よって電気主任技術者の仕事も、将来に渡って必要とされるわけです。

電験三種は高年収の資格ではありませんが、安定して働ける可能性が非常に高い資格といえます。

将来的に人手不足が見込まれる

経済産業省の資料によると、2030年から第三種電気主任技術者が不足すると試算されています。(参考:経済産業省「電気保安人材の持続可能な確保・活用に向けた制度のあり方について」より)

そのため、今のうちから資格を取得して業界に入り、実務経験を積んでおけば、将来に渡って安定して仕事を続けられるでしょう。

また電験二種になるとさらに人材不足が深刻になるといわれています。実務経験や試験で二種以上を取得できれば、さらに安定が期待できますね。

未経験でも転職できる

前述したとおり、電験三種には”未経験可かつ正社員”の求人も多く見つかります。

電験三種は受験資格がないため、他業種から試験を受ける人も少なくありませんよね。

未経験でも就職できるかどうか不安に感じられるかもしれませんが、その点は心配しなくても大丈夫です。

ただし、電気主任技術者の世界も20〜30代と年齢が若いほうが有利です。

もし完全に異業種から電験三種の取得を考えているなら、受験は早めをおすすめします。

定年後でも働きやすい

受電設備や電気工作物の点検は体の負担が少なく、健康に問題がない限り高齢になっても働きやすい職です。実際、資格保有者の人数が揃え難い中小企業になると、70代の人でも現役で働いていると聞きます。

また定年後の再就職先として人気のビルメンテナンス業界では、年齢不問で電験三種の資格保有者を探している企業が多く見られますよね。

電験三種は生涯使える資格といえるでしょう。

 

電験三種の資格で年収アップさせるコツ

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高年収ではないものの、安定性には優れている電験三種。

ここではネックである年収をアップさせるコツを紹介します。

電験二種、電験一種の取得を目指す

第三種電気主任技術者として働きつつ、電験二種、一種を目指すのが高年収への道の1つです。

電験二種以上いなれば、大規模プラントや大型商業施設なども働く場所の候補に入ってきます。

<取り扱える電圧の範囲>

  • 第一種:すべての事業用電気工作物
  • 第二種:電圧が17万V未満の事業用電気工作物
  • 第三種:電圧が5万V未満の事業用電気工作物(出力5,000kW以上の発電所を除く)

業界によって差はあるものの、電験二種の年収は500万円前後からスタートする求人が多いようです。

【C社】 工場の設備管理
資格・経験】 学歴不問、電験資格(2種以上)
勤務時間】 日勤
年収例】 500〜700万円

ちなみに電験三種を取得している前提で、第一種、第二種の資格取得の条件は下記の通りです。

  • 第一種:試験に合格する、または電験二種取得後に5年以上の実務経験(電圧5万V以上の電気工作物が対象)
  • 第二種:試験に合格する、または電験三種取得後に5年以上の実務経験(電圧1万V以上の電気工作物が対象)

今後、認定に必要な経験年数が短縮される可能性あり。また学歴による取得では必要な経験年数は短縮される。

試験と認定の2つが資格取得方法になりますが、どちらも簡単ではありません。しかし、上位資格を取得して希少性を上げるキャリアプランは年収アップの王道といえるでしょう。

他資格と組み合わせる

電験三種はその業務内容から電気工事士や電気施工管理技士、冷凍機械責任者、消防設備士などと相性のよい資格です。

  • 電気工事士:電気設備の設計・施工を行うための国家資格。第一種と第二種がある。
  • 電気施工管理技士:電気工事の施工計画作成や管理業務などを行うための国家資格。一級と二級に分かれる。
  • 冷凍機械責任者:高圧ガス製造保安責任者(国家資格)のうちの1つで、第一種から第三種まである。冷凍設備の保安・管理業務を行う。
  • 消防設備士:建物の消火設備の整備や工事を行うための国家資格。8区分の分かれる。

これらの資格に手当を出している会社も多いため、電験三種と組み合わせて保有しておけば手当が加算されます。

わかりやすいのが電気工事士でしょう。電気主任技術者が管理・監督なら、電気工事士は実務(プレイヤー)の資格にあたります。

取得難易度も電験三種ほど難しくはありません。詳しくは下記の記事をご覧ください。

関連記事:第二種電気工事士を独学で合格する勉強方法|おすすめテキストも紹介

実務経験を積む

実務経験を積むと転職で有利になります。

電気主任技術者における実務経験とは「500V以上の電気工作物に関する工事・維持・運用」のこと。具体的には配線工事、発電設備や変電設備の点検などが実務の対象です。

電験三種の資格があり、かつ実務経験がある人材は業界が違っても歓迎されるため、転職で年収が上がりやすくなります。

きちんとキャリアプランを立てて動くことが大切です。

 

電験三種は独立も可能

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電験三種は、実務経験5年以上で「電気管理技術者」として独立できます。

外部の業務を委託で請け負えるようになり、経営がうまく行けば年収1000万円以上は狙えるでしょう。

とはいえ独立の難易度は比較的高めです。

  • 実務経験経歴書を用意する(職場の捺印が必要)
  • 経済産業省の認定を受ける

残念ながら「その気になればすぐに独立できる」というわけではありません。

なお、もし独立に失敗したとしても、独立できるだけの実務経験があれば再就職はしやすいといわれます。

やはり安定が魅力の資格といえますね。

 

結論:電験三種は意味のある資格

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「難易度が高いのに、取得しても意味がない」との声もある電験三種ですが、実際は未経験でも正社員で転職でき、定年後も再就職に困らない安定した資格です。

確かに資格取得で年収が一発逆転となるわけではありません。

しかし、堅実に電気の業界でキャリアを積みたい人、手に職をつけて安定した収入を確保したい人にはメリットの大きい資格といえるでしょう。

もしあなたが電験三種の取得を考えているなら、ネット上の「意味ない」という声に惑わされず、ぜひチャレンジしてみてください。

なお「電験三種ってどれだけ難しいの?」「どんな試験内容なの?」と興味を持たれた方は、オンライン講座のサンプル動画(無料)を参考にしてください。

また、日本エネルギー管理センターでは、2021年より月額2,980円オンライン動画講座も開講しました。

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