電験三種(第三種電気主任技術者)は日本の電気工事技術者資格の一つです。電験三種を取得すると、発電所や工場などに設置されている電気設備の保安・監督が可能になります。

この記事では電験三種の仕事内容、取得するメリット、試験の概要と難易度などを解説します。

電験三種の受験を考えている方、電験三種がどのような資格なのかを知りたい方は、ぜひご一読ください。

電験三種とは

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電験三種とは、電気事業法にて定められた国家資格で、正式名称を「第三種電気主任技術者」といいます。

  • 電気設備の保守・監督が可能になる業務独占資格である
  • 電気主任技術者は第一種〜第三種にわかれる
  • 電験三種の試験は受験資格がなく、誰でも挑戦できる

電験三種の試験に合格することで「第三種電気主任技術者免状」の取得資格が得られます。

電気主任技術者の仕事内容

電気主任技術者の仕事内容は、おもに発電所や変電所、工場、商業施設、ビルなどに設置されている電気設備の保守・監督です。

電気設備の保守・監督業務は誰でもできるわけではなく、電気主任技術者の有資格者しか従事できません。よって電験三種は「業務独占資格」となります。

電気主任技術者の仕事内容については、以下の記事でより詳しく解説しています。

関連記事:電気主任技術者とは|業務内容や難易度、資格取得の難しさまで解説

電験三種と電験二種、一種の違い

電気主任技術者には第三種以外にも第二種、第一種があり、それぞれは電験二種、電験一種と呼ばれています。

第一種~第三種の違いは、監督できる事業用電気工作物で扱える電圧の違いです。

区分 扱える電圧の範囲
電験三種 電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)
電験二種 電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物
電験一種 すべての事業用電気工作物

電験一種・二種と比べて、電験三種には扱える電気工作物に制限があります。

ただ、街中の電線はおもに6,600ボルトで配電されているため、電験三種でも多くの電気工作物に対応可能です。十分に需要のある資格と言えるでしょう。

また試験の難易度は、電験三種→電験二種→電験一種の順に上がっていきます。

電気主任技術者と電気工事士の違い

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電気工事の国家資格として第一種、第二種電気工事士も人気です。電気工事士と電気主任技術者には以下のような違いがあります。

  • 電気主任技術者:電気設備の工事の際に保安の管理や監督に従事する。免状は一種〜三種にわかれる。
  • 電気工事士:現場で実際の電気工事に従事する。免状は一種と二種にわかれる。

電気工事士のほうが電気主任技術者よりも試験の難易度が低いため、未経験の方でも取り掛かりやすいのが特徴です。

電気工事が未経験で理系科目が苦手な方は、いきなり電験三種の試験を受けるのではなく、電気工事士から取得して、徐々にステップアップを目指すのもおすすめです。

電験三種取得者の年収例

電気主任技術者への転職後の年収は、350万円から500万円がボリュームゾーンとなります(参考:求人ボックス)。

未経験者OKの求人は年収は300万円~が多い印象です。とはいえ、免状保有者であれば「未経験者OK」「学歴問わず」の条件で多くの募集がある点は、電験三種のメリットと言えるでしょう。

また関連業務経験者になると400万円~、電験三種以外の資格(電気工事士や建築物環境衛生管理技術者など)を持っていると500万円~、というイメージです。

ちなみに「部長クラスの経験(部下のマネジメント)がある電気主任技術者」だと年収700万円を超える求人にも巡り会えます。年収に関しては「電験三種を取得しても案外稼げない」よりも「電験三種があると将来の選択肢が広がる」と考えるのがよいでしょう。

関連記事:電験三種は転職で有利って本当?有利になる理由と実際の仕事内容を紹介

電験三種の取得メリットは将来にわたる安定性

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「取得難易度の割に年収が高くない」という印象がある電験三種ですが、取得するメリットは収入ではなく、需要の大きさからくる安定性です。

今後も需要が続く可能性が高い

電気が通っていないビルや商業施設はまずありません。また、電気を使う建物がこの先なくなる可能性もほとんどないでしょう。

つまり、ビルや商業施設、学校、病院、再エネ施設などの電気設備のメンテナンス需要は、今後も残り続けると予想できます。

しかも、需要に対して電気主任技術者の人数は足りていません。令和3年の経産省の発表では「将来的には第三種電気主任技術者が不足する可能性がある」と明言されています。

「第三種電気主任技術者免状を持っていれば、未経験でもOK」とする正社員の募集も多くあります。電験三種は、今後も需要が続く可能性の高い資格と言えるのです。

AIには代替される可能性が低い

電気主任技術者の仕事は、電気工作物の工事・維持・運用における保安・監督です。これらは専門知識を有した技術者しか従事できないため、AIに代替される可能性は非常に低い仕事と言えます。

もちろん、今後何らかの形で仕事にAIが活用される可能性はあります。しかし、電気設備の点検や監督の最終的な責任は誰かが持つ必要があるため、AIと協業することはあっても、技術者としての価値を奪われるとは考えにくいでしょう。

年齢を重ねても働き続けやすい

電験三種で求人サイトを探すと「未経験OK」のほかに「年齢不問」での募集も見つかります。

前述の通り、電気主任技術者は業務独占資格です。とくにビルメンテナンス業界や電気保安業界は資格保有者が必要不可欠であるため、年齢を重ねた方でも経験者は歓迎される傾向があります。

また仕事内容も、直接体を動かすような肉体労働はありません。体力に自信がなくなっても続けやすい仕事と言えるでしょう。

電験三種の試験概要

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電験三種の試験について、試験科目や試験スケジュール、合格基準などを紹介します。

電験三種の試験科目と試験時間

電験三種の試験科目は全部で4科目です。すべて五肢択一のマークシート方式で出題されます。

 

科目 内容 試験時間
理論 電気理論、電子理論、電気計測、電子計測 90分
電力 発電所・変電所の設計や運転、送電線路・配電線路(屋内配線を含む)の設計・運用、電気材料 90分
機械 電気機器・パワーエレクトロニクス・電動機応用など、電力システムに関する情報伝送・処理 90分
法規 電気法規(保安に関するもの)、電気施設管理 65分

すべての科目に合格することで電験三種合格となります。

また過去試験問題は(一財)電気技術者センターのHPで確認できます。

電験三種の試験スケジュールと試験方式

電験三種の試験は1年に2回行われ、令和6年度は8月と3月(翌年)に予定されています。

また試験方式は、筆記方式とCBT方式が選択できます。

  • 筆記方式:試験日に指定された会場へ集合し、1日で4科目を受験する。
  • CBT方式:試験期間中に、自分で選択した会場と日時で受験する。科目毎に別日を設定することも可能。

CBT方式では試験会場と試験日時、受験科目を自分の都合にあわせられるため、受験者にメリットが多いと言えます。

令和6年度の試験日程と、各方式のメリット・デメリットについては以下の記事をご覧ください。

関連記事:令和6年度(2024年)電験三種の試験日程|申込方法やCBT方式についても

電験三種の申込方法と受験手数料

電験三種はインターネットか郵便での申込みが可能です。ただ郵便の場合、受験案内冊子を取り寄せる必要があります。

よって特別な事情がない限りはインターネットでの申込みをおすすめします。

【インターネット】

  • 受験手数料:7,700円(非課税)
  • 支払方法:銀行振込、クレジットカード決済、コンビニ決済、ペイジー決済
  • 締め切り:申込み最終日の17時まで

【郵便】

  • 必要な物:受験案内冊子内の払込取扱票
  • 受験手数料:8,100円(非課税)
  • 支払方法:ゆうちょ銀行(手数料は別途必要)
  • 締め切り:申込み最終日の消印まで有効

なおCBT方式での受験を希望する場合は、受験申込後にマイページからCBT方式への変更手続きが必要です。郵便で申し込んだ場合も、インターネットから手続きを行う必要があります。

電験三種の試験地

電験三種の試験は全国どこの都道府県でも受験が可能です。

筆記方式で受験する場合、申し込む際にどこの都道府県で受験するか選べます。試験会場は試験センターの指定となり、自分では選べません。

CBT方式の場合、全国の試験センター(200か所以上)から都合の良い場所を選択できます。

合格基準

電験三種の合格基準は各科目60点以上(原則)です。

ただし、試験の難易度が高すぎた場合は、合格点が引き下げられる調整が行われることもあります。

よってCBT方式で受験した場合、試験終了後に得点は確認できますが、正確な合否は合格発表まで判明しません。

仮に60点に一歩届かなくても、合格基準が引き下げられればその科目は合格です。希望を捨てずに合格発表を待ちましょう。

電験三種は科目別合格制度あり

電験三種は科目別合格制度があり、一度の試験で4つの科目すべてに合格する必要はありません。

科目別合格制度とは、一度目の受験で不合格ながら、単体では合格した科目があったとき、再受験の際に2年だけ合格した科目の受験を免除できる制度です。

つまり最初の試験で合格した科目は、翌年度と翌々年度まではその科目について試験が免除されます(※制度利用には申請が必要)

まとまった勉強時間を取りづらい社会人は、戦略的に活用したい制度です。

電験三種の難易度|合格率、科目別合格率、受験者の属性

電験三種の合格率は例年10%前後。近年は15%前後で推移しています。電気工事技術者資格としては高難易度に位置付けられる試験です。

国家資格のなかには最初から過去問をこなすだけで合格できる試験もありますが、電験三種にその戦法は通用しません。基礎からしっかり理解度を深めたうえで過去問に取り組む必要があり、長期的な勉強計画が求められます。

ここでは過去の合格率や科目別合格率、受験者の属性などから、電験三種の難易度の高さを解説します。

受験者数・合格者数・合格率の推移

(参考:(一財)電気技術者試験センターの公表値よりグラフ作成)

近年の合格率は上昇していますが、それでも合格率は15%前後。行政書士や宅建と同じくらいの合格率です。

なお同じ電気系資格である電気工事士の筆記試験は一種・二種ともに50%を超えます。

科目別合格率

※4科目合格者を除いた数値

(参考:(一財)電気技術者試験センターの公表値よりグラフ作成)

電験三種は科目別合格制度がありますが、各科目の合格率からわかる通り「明らかに簡単」な科目はありません

とくに法規は合格率10%を下回る年も多く、4科目のなかでも難しい科目だと言えます。

受験申込者の受験回数・属性

※数値はインターネット申込者を対象とした任意でのアンケート結果にもとづく

(参考:(一財)電気技術者試験センター「令和4年度電気技術者試験受験者実態調査」をもとにグラフ作成)

受験申込者の受験回数を見ると、3回以上挑戦している人が多いことがわかります。試験回数が年1回だった令和3年以前もこの傾向は変わらないため、2年、3年と長期で勉強している人が多いと考えられます。

また受験申込者の属性をみると、無回答が多いものの、ほとんどが就業者です。グラフの「その他企業団体など」には電気機器製造会社や建設会社などが入ります。

合格率から考えても「働きながら取得を目指すなら、科目別合格制度の利用を検討すべき難易度」と言えるでしょう。

独学で電験三種は合格可能か

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電験三種の試験は出題範囲が広く、また計算問題が半分以上を占めます。文章問題も出題されますが、難易度は計算問題と同等かそれ以上です。

計算問題を得点源にできないと合格が難しいため、数学や電力の基礎知識がない方が独学で挑戦するのは、かなりハードルが高いでしょう。

  • 電気工事の実務経験がある
  • 理系科目が得意
  • 受験勉強のような長期的な勉強も苦ではない

上記に当てはまる方は、参考書を購入しての独学も可能かも知れません。しかし、そうではない方は、通信講座や専門学校を利用するほうが無難です。

いまはオンラインで受講できる講座も登場しているため、通学の時間が取れない方でも勉強しやすい環境が整っています。ぜひご自身にあう学習方法を探してみてください。

関連記事:電験三種の勉強時間は1000時間?独学で頑張る方へ勉強方法も解説

お得な電験三種講習会のご案内【月額2,980円~】

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電験三種について、電験三種の概要や取得メリット、試験の傾向などをご紹介しました。

電験三種は国家資格の一つであり、合格までの道のりは決して易しいものではありませんが、電験三種に合格すればキャリアの幅はぐっと広がります。数年かけて取得する価値のある資格です。

また日本エネルギー管理センターでは電験三種対策の講習会を開催しています。

レベル別にクラスが分けられており、今のあなたにあったレベルの講習が選択いただけます。

【初級クラス】

「今から勉強を始めるけど、そもそも今まで電気に関わってこなかった」という方から「一度勉強したけど、基礎からもう一度基礎から勉強したい」方向け

【中級クラス】

初級クラスを卒業した方、簡単なA問題を自力で解ける方を「時間をかければ自力で過去問にて合格ラインを取れる」レベルに持っていく

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